転職で失敗しない! パワハラが多い企業の特徴は?

困っているフィギュアのサラリーマン

パワハラ対策が法制化されたのをご存知でしょうか?労働施策総合推進法が改正されたことにより、企業側はパワハラ防止のために必要な措置をとることが義務づけられました。これを俗にパワハラ防止法と呼び、大企業は2020年6月から、中小企業は2022年4月から施行されます。厚生労働省は既に2012年、パワハラの定義と具体的な6類型と呼ばれる事例を提案していましたが、ここにきて法制化を推進した背景には、職場におけるパワーハラスメントが増え続け、社会的に問題視されていることが上げられます。実際、都道府県の労働局などに設置された総合労働相談コーナーには、「いじめ・嫌がらせ」に関する相談が年々増加しています。平成24年度には相談内容の中でトップとなり、現在も増加の一途をたどっています。平成19年度の「いじめ・嫌がらせ」の相談件数が2万8335件だったのに対して、令和元年度では8万7570件にも登りました。そこで今回はどういった職場でパワハラが多いのか、転職活動においてパワハラがある企業を見抜くヒントをご紹介していきたいと思います。

目次

パワハラの定義って何?

職場で行われるパワーハラスメントの定義は、

  • 優越的な関係を背景とした言動
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
  • 労働者の就業環境が害されるもの

上記3つの要素すべてを満たすものを言います。なお、客観的にみて業務上必要であり、その業務に応じた範囲で行われる指示や指導についてはパワハラとは見なされません。順番に詳しくみていきましょう。

「優越的な関係を背景とした」言動とは…

抵抗や拒絶することができない相手に対して行われるものを指します。「職場内での優位性」には、役職や年次などに限らず、人間関係や専門知識の有無、雇用形態の違いなど、様々な優位性が含まれます。そのため上司から部下への嫌がらせだけではなく、先輩・後輩の間や同僚同士、社員と社員以外の間で行われるものもあります。

「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは…

一般的にみて、言動が明らかに業務上必要性がないもの、またはその態様が業務上ふさわしくないものを指します。しかし上司は業務上の指揮や教育、指導を行わなければなりません。たとえ上司の指示や注意を不満に感じたとしても、それが業務上必要であり、適性の範囲で行われたものであればパワーハラスメントにはあたりません。そのため、「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動の判断は言動の目的をはじめ、言動を受けた側の問題行動の有無や内容、経緯などを総合的に考慮し、判断する必要があります。

「就業環境が害される」とは…

言動を受けたものが、身体的又は精神的に苦痛を与えられたことにより、仕事のパフォーマンスが著しく悪化するなどの悪影響が生じることを指します。この判断は、同じ言動を受けた時に、社会一般の労働者が働く上で見過ごせないほどの支障が生じたと感じるかどうかが、判断基準となります。言動の頻度や継続性はもちろんのこと、身体的暴力や精神的苦痛を与える言動の場合には、1回でも就業環境を害する場合があり得ます。

過去に行われたパワハラの内容

厚生労働省によると、過去3年間に受けたパワハラの内容で一番多かったのは、「精神的な攻撃」でした。

パワハラの具体的な内容割合
精神的な攻撃54.9%
過大な要求29.9%
人間関係から24.8%
個の侵害22.3%
過少な要求19.8%
身体的な攻撃6.1%
その他6.2%

パワーハラスメントは、「上司から部下へ」行われることが圧倒的に多く、次に「先輩から後輩へ」、「正社員から正社員以外へ」と続いています。一方、パワハラの多くは立場が上の者から下の者に行われていますが、単に上下関係の「職務上の地位」に限りません。さまざまな人間関係や専門知識などを背景に嫌がらせ行為が起きています。寄せられた相談内容のうち、実際にパワーハラスメントに該当したものには、同僚同士や、部下から上司へ行われたものもありました。

パワーハラスメントの関係性割合
上司から部下へ47.9%
先輩から後輩へ17.2%
正社員から正社員以外へ10.4%
正社員の同僚同士6.9%
部下から上司へ2.4%
後輩から先輩へ1.3%
正社員以外から正社員へ1.2%
正社員以外の同僚同士2.7%
その他1.5%

それぞれの具体的なパワーハラスメントは以下になります。

類型内容(性別、年齢)
精神的な攻撃いること自体が会社に対して損害だと大声で言われた(男性 / 50 歳以上)ミスをしたら現金に換算し支払わされる(女性、40 歳代)全員が観覧するノートに何度も個人名を出され、能力が低いと罵られた(男性 / 20 歳代)
過大な要求多大な業務量を強いられ、月80 時間を超える残業が継続していた(男性、20 歳代)明らかに管理者の業務であるにもかかわらず、業務命令で仕事を振ってくる(女性、40 歳代)絶対にできない仕事を、管理職ならやるべきと強制された(女性 / 50 歳以上)
人間関係からの切り離し今まで参加していた会議から外された(女性、50 歳以上)職場での会話の無視や飲み会などに一人だけ誘われないなど(男性30 歳代)他の部下には雑談や軽口をしているが、自分とは業務の話以外一切ない(男性 / 50 歳以上)
個の侵害出身校や家庭の事情等をしつこく聞かれ、答えないと総務に聞くと言われた(女性、40 歳代)接客態度がかたいのは彼氏がいないからだと言われた(女性、20 歳代)引越したことを皆の前で言われ、おおまかな住所まで言われた(女性 / 20 歳代)
過小な要求故意に簡単な仕事をずっとするように言われた(男性、30 歳代)一日中掃除しかさせられない日々があった(男性、20 歳代)入社当時に期待・希望していた事とかけ離れた事務処理ばかりさせられる(女性 / 50 歳以上)
身体的な攻撃カッターナイフで頭部を切りつけられた(男性 / 20 歳代)唾を吐かれたり、物を投げつけられたり蹴られたりした(男性 / 20 歳代)痛いと言ったところを冗談っぽくわざとたたく(女性 / 40 歳代)
出典情報/職場のパワーハラスメントに関する実態調査
・調査主体:厚生労働省(委託事業として東京海上日動リスクコンサルティング株式会社が実施)
・調査時期:企業調査 / 平成28年7月~10月 / 従業員調査 / 平成28年7月
・調査対象:企業調査 / 全国の従業員(常勤社員)30人以上の企業20,000社、回収数4,587社
従業員調査 / 全国の企業・団体に勤務する20~64歳までの男女10,000名(公務員、自営業、経営者、役員は除く)
・調査条件等:本調査では、職場のパワーハラスメントを「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」として実施。

パワハラの多い職場の特徴は?

厚生労働省が行った調査によると、パワーハラスメントに関連する相談がある職場に共通する特徴で最も多かったのが、「上司と部下のコミュニケーションが少ない職場」でした。次に「失敗が許されない / 失敗への許容範囲が低い職場」(22.0%)、「残業が多い / 休みが取り難い職場」(21.0%)と続いています。上司と部下の間でうまくコミュニケーションが図れていないと、アドバイスでや指揮ではなく「命令」になってしまいがちです。時としてそれは圧力となりパワハラへの要因になります。また劣悪な労働環境においてもストレスの矛先がパワーハラスメントとなって立場の弱い者にいってしまいます。

パワハラの多い職場の特徴 ※上位10位のみ記載割合
上司と部下のコミュニケーションが少ない職場45.8%
失敗が許されない・失敗への許容範囲が低い職場22.0%
残業が多い・休みが取りにくい職場21.0%
正社員や正社員以外(パート・派遣社員など)といった様々な立場の従業員が共に働いている職場19.5%
従業員数が少ない職場13.1%
様々な年代の従業員がいる職場11.9%
他部署や外部との交流が少ない職場11.8%
業績が低下・低調な職場9.5%
従業員の年代に偏りがある職場8.7%
中途入社や外国人など、多様なバックグラウンドを持つ従業員が多い職場6.5%
厚生労働省(職場のパワーハラスメントに関する実態調査)より参照 / ・調査主体:厚生労働省(委託事業として東京海上日動リスクコンサルティング株式会社が実施) / 調査時期:企業調査 平成28年7月~10月 / 従業員調査 / 平成28年7月・調査対象:企業調査 全国の従業員(常勤社員)30人以上の企業20,000社、回収数4,587社 / 従業員調査 / 全国の企業・団体に勤務する20~64歳までの男女10,000名(公務員、自営業、経営者、役員は除く)・調査条件等:本調査では、職場のパワーハラスメントを「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」として実施。

転職活動で、パワハラの少ない企業を選ぶには

調査を行った企業のうち、82%の企業がパワーハラスメントの対策は経営上の課題として重要だと認識しています。また「職場のパワーハラスメントの予防・解決のための取組は経営上の課題として重要か」の質問には、「非常に重要である」「重要である」を合わせると、82.1%が重要であると答えています。パワーハラスメントの予防や問題解決の重要性は、多くの企業が認識していることがうかがえます。一方、実際にパワーハラスメントの対策を行っている企業は、52.2%にとどまっています。特に従業員が99人以下の企業では26.0%という結果になっています。実際にパワーハラスメントの予防・解決に向けた取り組みとして一番多く実施されているのは、「相談窓口の設置」で、実施企業の82.9%で行われています。次に多いのが「管理職向けの講演や研修」(63.4%)。そして「就業規則などの社内規定に盛り込む」(61.1%)が続いています。この相談窓口とは、従業員の悩み、不満、苦情、トラブルなどを受け付けるためのもので、パワーハラスメント以外にもセクハラや労働環境などの相談にも応じてもらえます。従業員が1,000人以上の企業では98.0%が相談窓口を設置しています。しかし従業員が99人以下の企業では、相談窓口の設置率は44.0%と低い水準にとどまっています。

転職活動において、パワーハラスメントのない企業を見抜くヒントとして、「上司・部下」をはじめ社員間のコミュニケーションがきちんと図れているか、労働環境が劣悪ではないか、そして相談窓口が設置されているかがポイントと言えるでしょう。また相談窓口が設置されていなくても労働組合がある会社は、組合に相談することもできます。具体的な職場環境について直接聞きづらい場合は、転職エージェントを利用するのもおすすめです。転職エージェントであれば、「過去パワーハラスメントなどが問題になったか」などの具体的な事例も代わりに聞いてもらえますよ。

まとめ

今後はパワーハラスメントを受けた被害者が相談しやすい環境が整っていくでしょう。また、昨今のコンプライアンスに対する意識の高まりや、パワハラ対策が法制化されることにより、多くの企業がパワーハラスメントに対する取り組みに力を入れていくでしょう。企業が具体的にどのような対策を講じているのか、転職活動の際はぜひそこもチェックしてください。

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