筆者は求人広告の制作およびライティングを行っています。今までに転職サイトのリクナビNEXT、マイナビ転職、@TYPE、女の転職、日経キャリアNETの他、新卒向け媒体であるリクナビ、マイナビなどの主要媒体を手がけてきました。今までに取材してきた企業は一部上場企業からベンチャー企業まで、のべ300社以上にのぼります。今回は、数々の取材を通じてわかった人事の年齢制限に関する本音をご紹介します。
募集要綱にある「資格欄」に隠された本音
専門スキルや経験、資格を求められる仕事以外、多くの企業は「若手」を求めています。法律上、求人広告で年齢制限を行うことはできません。これは労働施策総合推進法(旧・雇用対策法)を根拠としています。年齢に関係なく求職者に対して均等な就職機会を与えなくてはならないとして、厚生労働省が2007年に定めました。その背景には中高年に対する再就職の妨げを抑止する目的があります。企業にとっては年齢に関係なく仕事の能力や経験、職務の適性で判断した方が有益になるかと思われます。しかし多くの企業では主に第二新卒と言われる20代前半から、中堅層の30代前半までを求める傾向にあります。中にはどうしても若手が欲しいとの理由で、「例外事由3号の(イ)」を用いる企業も存在します。この「例外事由3号のイ」とは、雇用期間の定めがないことを前提として、長期勤続によるキャリア形成を目的とする場合にのみ年齢制限ができるという特例です。元々はフリーターなどの若年層に雇用の機会を与えるために制定されたもので、基本的には35歳未満を想定しています。※また、募集対象者の職業経験を不問にすることと、新卒者以外の者は新卒者と同等の処遇にするという条件も盛り込まれています。このように、求人広告で年齢制限を行った場合はまったくの「未経験者」を前提とした採用を行わなくてはなりませんが、企業側としては本当に「未経験者」を求めているわけではなく、「経験のある若手」もしくは「ポテンシャルのある若手」を求めていることが往々にあります。どうして抜け道である年齢制限の「例外事由3号の(イ)」を使ってでも企業側は若手を欲しがるのでしょうか。
※「例外事由3号の(イ)」の基本的な想定年齢は35歳未満ですが、必ずしもこの年齢に限られるわけではありません。ただし定年を定めている場合は、勤続可能期間が極端に短くなるような上限年齢を設定して募集・採用することはできません。おおむね45歳未満が目安とされています。
企業側はどうして若手が欲しいの?
素直な人物を求めているから
取材の際、どうして若手が欲しいのかを尋ねるとほとんどの人事が「素直だから」と答えます。あるいは、年齢制限を行わなくも求める人物像の質問で「素直な人が欲しい」と答えます。新しい職場で業務をはじめる際、経験者であっても仕事の進め方や業務上のルールなど、前職とは異なることが多々あります。また研修担当者や上司が自分より年下になることもあるでしょう。そういった時に素直な姿勢で新しいやり方を受け入れられる人材が欲しいと人事は思っているのです。一方、ブラック企業の場合は他の企業のやり方を知らないから、就業経験の無い人物が欲しいと考えていることもありますので注意しましょう。
従業員の平均年齢が低いから
20代が中心に活躍する会社でも、若手を求める傾向にあります。特にベンチャー企業などでは、従業員のほとんどが20代で役員や社長でも30代前半といったことも。そうした企業の場合、まわりとのバランスを考慮して若年層を求めます。
給与を安く抑えられるから
終身雇用制度が崩壊しつつある日本ですが、年功序列の給与制度はまだまだ多くの企業で導入されています。当然、若年層よりミドル層の方が支払う給与は高くなります。また新たに人材を採用する際も、年齢を考慮して基本給を決定することは珍しくありません。そのため、同等のスキルや経験を持つ若年層とミドル層であれば、より支給給与を低く抑えられる若年層を採用したがるのです。
若手でない求職者はどうすればいいの?
上記で述べた通り、専門スキルや経験、資格を求められる経験者募集をのぞいて、多くの企業が若手を求める傾向にあります。二度手間にならないよう、明らかに若手を求めている求人は避けるのがベターです。また年齢制限を行っていなくても、若手ばかりが活躍していることをアピールしている原稿は、若手を求めている場合が多いです。ですがそうした企業であっても、絶対若手しか採用しないということはありません。企業が採用活動をする目的は会社にとってより良い人材を採用し、業績を上げていくことです。求人広告を掲載する時点では若手が欲しいと思っていても、実際に応募してくる求職者の経歴書を見て、ミドル層への考え方が変わる企業もあります。また年齢制限を行っていたとしても年齢オーバーの応募者は一定数います。そうした際でも「そこまで当社に興味があるのだろうか」「年齢はオーバーしているけど能力がある」などの理由で、面接を通過させる企業も中にはあります。もしあなたがその企業で活躍したいと考えるのであれば、職務経歴書や面接で熱意や若手には持ち得ない経験をアピールするのが良いでしょう。
まとめ
企業が若手を求めるのは、若手は素直なので仕事を教えやすいといった理由が上げられます。若手を望んでいる求人の場合、ミドル層の求職者は不利と言えます。ですがその求人に興味があり入社を望むのであれば、若手には無い経験やスキルをアピールしてください。また面接では前職のやり方に問われない柔軟な思考とフラットな姿勢を示せると良いでしょう。
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