誰しも一度は感じたことがある、認められたいという気持ち。それが承認欲求です。この欲求は、私たちを突き動かす原動力となる一方で、強くなりすぎると心の負担になることもあります。また子供の場合は、いわゆる“かまってちゃん”になったり、大人になっても評価基準が他人で依存的になってしまうことも。
この記事では、承認欲求が生まれる背景やそれがもたらす影響、そして自分自身や周囲の人との関係を円滑にするための対処法について解説します。
さらに、
- 承認欲求が強い自分
- 承認欲求が強い他人
- 承認欲求が強い子供
それぞれの側面から、人間関係の改善や人付き合いのストレスを軽減するポイントをお伝えします。
自分や子供の承認欲求が強いのでは?と心配になっている方、周りの承認欲求で悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
承認欲求とは
承認欲求とは、他人からの肯定や認められたいという欲求のことです。人間は他者からの承認や肯定を受けることで安心感や幸福感を感じることができます。また承認欲求が満たされることで、自己価値感や自己肯定感が高まり、精神的な安定感を得ることができます。
承認欲求が強すぎるとどうなるの?
承認欲求は誰しも持っているものですが、その欲求が過度に強くなると自己の価値感が依存的になり、他人の評価ばかり気にするようになってしまいます。
承認欲求と自己開示欲の違い
承認欲求と自己開示欲は、どちらも人間が持つ基本的な欲求ですが、その性質や目指すものが異なります。
特徴 | 承認欲求 | 自己開示欲 |
目的 | 他者から認められたい、評価されたい | 自分の内面や考えを相手に伝えたい |
姿勢 | 受動的 | 能動的 |
動機 | 自尊心を高めたい、孤独感を解消したい | 相互理解を深めたい、共感を得たい |
表現 | 褒め言葉を求めたり、比較したりする | 自分の経験や感情を率直に話す |
承認欲求
- 他者からの評価を重視する
自分の価値を他者によって測ろうとする傾向があります。 - 比較をする
他人と自分を比較し、優位に立ちたいという気持ちが強いことがあります。 - 完璧主義
常に完璧な自分を演じようとするため、ストレスを感じやすいです。
自己開示欲
- 心のつながりを求める
他者との深い関係を築きたいという願望があります。 - 共感を得たい
自分の気持ちを理解してほしいという気持ちがあります。 - 成長の機会と捉える
自己開示を通して自己理解を深め、成長したいという意欲があります。
両者の関係性
- 自己開示欲は、承認欲求を満たす手段の一つとなることがあります。
- 自分のことを正直に話すことで、相手から共感や理解を得られ、結果的に自己肯定感につながる場合があります。
- 承認欲求が過度になると、自己開示が難しくなることがあります。
- 他者の評価ばかりを気にしてしまい、本当の自分を出すことができなくなる場合があります。
承認欲求と自己開示欲は、どちらも人間関係において重要な役割を果たします。しかし、両者のバランスが大切です。過度な承認欲求は、人間関係を歪めたり、心の負担になったりすることがあります。一方、自己開示は、人間関係を深め、自己成長を促す上で非常に有効な手段です。
マズローの欲求5段階説とは
マズローの欲求5段階とは、アメリカの心理学者アブラハム・マズローが提唱した、人間の欲求に関する有名な理論です。人間の欲求はピラミッド状に5つの階層に分かれており、下の階層の欲求が満たされると次の階層の欲求が生まれ、より高いレベルの欲求を求めるようになるという考え方です。
承認欲求は、他者とのつながりや社会的な関係性が重要であり、個人の成長や幸福感に影響を与える要素として考えられています。そして承認欲求が満たされることで、自己肯定感や自己価値感が高まり、他者との関係を築くことができます。
5つの欲求階層
- 生理的欲求:
- 生存するために最も基本的な欲求です。
- 食欲、睡眠欲、性欲などが含まれます。
- この欲求が満たされないと、他の欲求を考える余裕はありません。
- 安全の欲求:
- 心身両面の安全を確保したいという欲求です。
- 住居の安定、経済的な安定、健康などが含まれます。
- 危険や不安から身を守りたいという欲求です。
- 社会的欲求:
- 他者との関係性、所属感、愛を求める欲求です。
- 家族、友人、仲間とのつながりを大切にし、愛されたい、認められたいという欲求です。
- 承認欲求:
- 他者から認められたい、尊敬されたいという欲求です。
- 社会的地位、名誉、達成感などが含まれます。
- 自尊心や自信を高めたいという欲求です。
- 自己実現の欲求:
- 自分自身の可能性を最大限に引き出し、何かを成し遂げたいという欲求です。
- 才能や能力を活かし、自己成長を続けたいという欲求です。
マズローの欲求5段階説のポイント
- 欲求は段階的に満たされる
下の階層の欲求が満たされると、次の階層の欲求が生まれ、より高いレベルの欲求を求めるようになります。 - 欲求は個人によって異なる
人によって、どの欲求を強く感じるかは異なります。 - 状況によっても欲求は変化する
環境や状況の変化によって、優先する欲求が変わることもあります。
マズローの欲求5段階説の応用
この理論は、心理学だけでなく、経営学、マーケティング、教育学など、様々な分野で応用されています。
- 経営学:従業員のモチベーション向上や、顧客のニーズの把握に役立ちます。
- マーケティング:製品やサービスの開発、広告戦略の立案に役立ちます。
- 教育:学習意欲の向上や、生徒の個性を尊重した教育に役立ちます。
マズローの欲求5段階説は、人間の行動を理解する上で非常に重要な理論です。この理論を理解することで、自分自身や他人の行動をより深く理解し、より良い人間関係を築くことができるでしょう。
また、承認欲求が強すぎると、自己成長や自己実現の妨げになることも。自分自身を認め受け入れながら、バランスを保つことが重要です。
自分の承認欲求の強さを自覚して適切な対処法を取り入れることで、より健全な人間関係を築き自分らしい生き方を見つけていくことができるでしょう。
承認欲求が強い自分への対処法
承認欲求が強い人の特徴
承認欲求が強い人は、一般的に以下の様な特徴が見られます。
- 他人の評価を過度に気にする
周りの人がどう思っているのかを常に気にし、自分の行動や言動に自信が持てない。 - 完璧主義
少しでもミスをすると、自己評価が大きく下がる。 - 比較癖が強い
他人と自分を比較し、常に優位に立ちたいと考える。 - 認められると嬉しいが、否定されると自信を失う
褒められると気分が上がる一方、批判されると落ち込みやすい。 - 注目を集めたい
存在感を示し、周囲から認められたいという欲求が強い。
承認欲求が強くなる原因
幼い頃に十分な愛情を受けられなかった経験や、周囲の比較意識が強い環境で育ったことなどが、承認欲求が強くなる原因として考えられます。
- 幼少期の経験
親や周囲の人から十分に認められなかった経験があると、大人になっても承認を求める傾向が強まる。 - 性格
もともと内向的で自分に自信がない人は、他人の評価を気にしやすく、承認欲求が強くなる傾向がある。 - 社会環境
競争社会において、常に成果を求められる状況下では、承認欲求が高まりやすい。
承認欲求が強い人の対処法
承認欲求が強いことで悩んでいる人は、以下の様な対処法を試してみましょう。
- 自己肯定感を高める
自分の良いところを見つけ、積極的に認めるようにする。 - 完璧主義を捨てる
完璧を求めるのではなく、良いところと悪いところも含めて自分を受け入れる。 - 比較をやめる
他人と比較するのではなく、自分自身の成長に目を向ける。 - 小さな成功体験を積み重ねる
小さな目標を達成し、自信をつけていく。 - 信頼できる人に相談する
一人で抱え込まず、信頼できる人に相談してみる。
承認欲求とモチベーションの関係
承認欲求は、モチベーションを向上させる力にもなりますが、一方で、過度な承認欲求は、プレッシャーとなり、かえってモチベーションを低下させることもあります。
承認欲求をモチベーションに変えるためには、以下の点に注意しましょう。
- 内発的な動機
外からの評価だけでなく、自分自身で目標を設定し、達成感を得ることを大切にする。 - 過程を楽しむ
結果だけでなく、過程を楽しむことで、モチベーションを長く持続させる。 - 失敗を恐れずに挑戦する
失敗を恐れず、新しいことに挑戦することで、成長の機会を得る。
承認欲求が強い他人への対処法
承認欲求が強い方への接し方は、その人の個性や状況によって異なりますが、一般的に以下の様な対処法が有効です。
承認欲求が強い人に接する際のポイント
- 否定的な言葉は避ける
直接的に否定したり、ダメ出しをすることは、相手の自尊心を傷つけ、逆効果になる可能性があります。 - 相手の話を聞く
まずは相手の話をじっくり聞き、共感する姿勢を見せることが大切です。 - 具体的な行動を褒める
抽象的な褒め言葉ではなく、「〇〇のところが良かった」など、具体的な行動を褒めることで、より効果的にモチベーションを高めることができます。 - 相手の能力を認める
相手の能力や長所を認め、信頼を示すことで、自信を持たせることができます。 - 目標達成をサポートする
目標設定を一緒に考えたり、達成するためのサポートをしたりすることで、モチベーションを維持することができます。 - 適度な距離を保つ
常に相手の期待に応えようとすると、自分自身が疲れてしまう可能性があります。適度な距離を保ち、自分自身の時間も大切にすることが大切です。
承認欲求が強い人が職場にいる場合の対処法
- チームで目標を設定する
個人の目標だけでなく、チーム全体の目標を共有することで、個人間の競争意識を抑え、協力し合うことを促すことができます。 - フィードバックの機会を設ける
定期的にフィードバックの機会を設け、お互いの意見を交換することで、建設的な議論ができる環境を作ることができます。 - 多様な意見を尊重する
一つの意見に固執せず、多様な意見を尊重する風土を作ることで、創造性を育むことができます。
承認欲求が強い人が友人や家族にいる場合の対処法
- 相手の気持ちを理解しようとする
なぜ相手が承認を求めるのか、その背景にある原因を探ることで、より深く理解することができます。 - 共感する
相手の気持ちに共感し、寄り添うことで、安心感を与えることができます。 - 具体的なアドバイスをする
抽象的なアドバイスではなく、具体的な行動を伴うアドバイスをすることで、より効果的にサポートすることができます。
承認欲求が強い子供への対処法
マズローの5段階欲求が示す通り、人間は生理的欲求(食欲・睡眠欲など)や安全の欲求が満たされてはじめて、愛情欲求や承認欲求を求めるようになります。子供も同様で、「愛されたい」「認めてもらいたい」という欲求を段階的に満たしながら心を成長させていきます。
一方で、親が仕事や他の兄弟で忙しかったり愛情表現が少なかったりすると、承認欲求完全に満たされずにが人一倍強くなってしまうことも。また、大人になっても評価基準が他人で、「常に誰かに認めてもらいたい」という強迫観念を抱いてしまう傾向があります。
【子供の承認欲求が強くなる原因】
- 親やまわりが忙しく、かまってもらえない
- 両親からあまり褒められない
- 愛情を十分に受けらていない
- 家庭内で厳しいルールやしつけがある
承認欲求が人一倍強い子供への対処法としては、次のものを実践してみてください。
① 具体的な行動を褒める
- 結果だけでなく過程を褒める
ただ単に「すごいね!」と子供を褒めるだけでなく、「絵を丁寧に塗るところが良かったね」など、具体的な行動を褒めることで、何が評価されたのかを明確に伝えられます。 - 努力を認める
結果だけでなく、努力した過程を認めることで、子供の自信につながります。
② 比較をやめる
- 他人との比較は避ける
他の子自分の子供を比較して「〇〇ちゃんはいつもできるのに」と言うことは、子供のやる気を削いでしまいます。 - 自分との比較を促す
過去の自分と比較し、「前回より上手にできたね」と声をかけることで、成長を実感させます。
③ 自信を持たせる
- 小さな成功体験を積ませる
無理のない目標を設定し、達成できるようにサポートすることで、自信に繋がります。 - 失敗を恐れない雰囲気を作る
失敗は成長の機会であることを伝え、失敗を恐れないように促します。
④ 共感する
- 子供の気持ちを理解する
なぜ承認を求めているのか、その背景にある気持ちを理解しようと努めます。 - 共感の言葉をかける
「〇〇が嬉しい気持ち、よく分かるよ」など、共感の言葉をかけることで、子供に安心感を与えます。
⑤ 自立を促す
- 自分で考えさせる
何でもすぐに手助けするのではなく、自分で考え、行動できるように促します。 - 責任を持たせる
小さなことから少しずつ、責任を持たせることで自立心を育みます。
⑥ 親も気を付けること
- 過度な期待をかけすぎない
子供にも、できることとできないことがあります。無理のない範囲で期待しましょう。 - 完璧主義にならない
完璧を求めすぎると、子供も完璧を目指してしまい、プレッシャーを感じてしまいます。 - 自分自身も成長する
親も常に成長することを意識し、子供と一緒に学ぶ姿勢を持つことが大切です。
承認欲求が強い子供への声かけ例
- 「〇〇くん(ちゃん)は、いつも一生懸命で偉いね!」(努力を認める)
- 「前回よりも、もっと上手に書けるようになったね!」(成長を認める)
- 「難しい問題に挑戦して、よく頑張ったね!」(チャレンジを認める)
- 「〇〇くん(ちゃん)の考え、面白いね!」(意見を尊重する)
その他のポイント
- 一貫性のある態度を保つ
褒める時は褒め、叱る時は叱るなど、一貫性のある態度を保つことが大切です。 - 根気強く接する
効果が出るまでには時間がかかることがあります。根気強く接し続けることが重要です。
子供の個性を理解し、それぞれの状況に合わせて適切な声かけをすることが大切です。
まとめ
承認欲求は、人間が持つ普遍的な欲求の一つです。承認欲求が強いことは、必ずしも悪いことではありません。しかし、過度に強い承認欲求は、心の負担となり、人間関係や自己肯定感に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、承認欲求が強すぎると、自己成長や自己実現の妨げになることも。自分自身を認め受け入れながら、バランスを保つことが重要です。
自分の承認欲求の強さを自覚して適切な対処法を取り入れることで、より健全な人間関係を築き自分らしい生き方を見つけていくことができるでしょう。
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