「1日1万歩」という言葉がありますが、『1万歩は歩きすぎ』『1万歩以上歩くのは身体に悪い』などの声も聞きます。
本当のところ、健康維持に効果があるウォーキングの歩行数はどうなのでしょうか?
こちらの記事では「1日1万歩」と言われる理由や根拠をはじめ、正しいウォーキングの仕方、ウォーキングによって得られる素晴らしい効果、男性・女性の平均歩行数などについて解説していきます。
そもそも、なぜ1日1万歩?
「なぜ1日1万歩?」という疑問は、多くの人が抱く自然なものです。
「1日1万歩」という数字は、厳密な科学的な根拠に基づいて生まれたものではなく、健康増進のための目標として広く普及したものです。
なぜ「1万歩」になったのか?
- 歩数計の普及
1960年代に日本で開発された万歩計が、「1万歩」という数字を目標として設定することで、多くの人々に歩行を促しました。 - 健康意識の高まり
生活習慣病の増加など、健康に対する関心の高まりとともに、「1日1万歩」は健康的な生活を送るための指標として定着しました。 - 消費カロリーとの関係
1万歩を歩くことで、ある程度のカロリーを消費でき、肥満予防に繋がると考えられました。
「1日1万歩」は絶対ではない
2019年の厚生労働省の調査では、1日あたりの平均歩数が男性が6,793歩、女性は5,832歩という結果でした。
「1万歩に全然足りてない」と思われるかもしれませんが、「1日1万歩」は絶対ではありません。
厚生労働省が新たに改訂したガイドラインによれば、高齢者は1日6,000歩以上、成人は1日8,000以上のウォーキングを目標にすることを推奨しています。
健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 推奨事項一覧
※1 生活習慣、生活様式、環境要因等の影響により、身体の状況等の個人差が大きいことから、「高齢者」「成人」「こども」について特定の年齢で区切ることは適当でなく、個人の状況に応じて取組を行うことが重要であると考えられる。
※2 安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費する骨格筋の収縮を伴う全ての活動。
※3 身体活動の一部で、日常生活における家事・労働・通勤・通学などに伴う活動。
※4 身体活動の一部で、スポーツやフィットネスなどの健康・体力の維持・増進を目的として、計画的・定期的に実施する活動。
※5 負荷をかけて筋力を向上させるための運動。筋トレマシンやダンベルなどを使用するウエイトトレーニングだけでなく、自重で行う腕立て伏せやスクワットなどの運動も含まれる。
※6 座位や臥位の状態で行われる、エネルギー消費が1.5メッツ 以下の全ての覚醒中の行動で、例えば、デスクワークをすることや、座ったり寝ころんだ状態でテレビやスマートフォンを見ること。
※7 テレビやDVDを観ることや、テレビゲーム、スマートフォンの利用など、スクリーンの前で過ごす時間のこと。
(出典:厚生労働省『健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023(概要)』)
1日1万歩以上を歩くことのメリット
厚生労働省は1日6,000歩、または8,000歩を健康維持には有効だとしていますが、1万歩以上歩くことが体に害になるというわけではありません。実際、厚生労働省が日本人の労働者490人を対象にした調査では、1日1万歩を目標としてウォーキングを行った結果、4時間歩行をすることで睡眠の質が改善されました。特に普段から運動の習慣がない場合は、睡眠の質が大きく改善されたことがわかっています。※1 さらに“身体活動量と死亡率などとの関連をみた疫学的研究の結果からは、18歳~64歳の成人は「1日1万歩」の歩数を確保することが理想と考えられる”※2としています。
また、アメリカ国立がん研究所によると、40歳以上(平均年齢56.8歳)の男女約5,000人の「1日の歩数と死亡率の関係」を1約10年調査したところ、1日2,000歩の人に比べ、1日4,000歩の人の方が死亡率が低く、8,000歩、1万2,000歩と、歩くほどその死亡率が下がることがわかりました。(1万2000歩以上は大きな変化なし)
要は、性別・年齢・身体的な差を踏まえ、強度や量を調整しながら、可能なものから取り組むことが重要なのです。
もちろんあまり体力に自信がないのに歩きすぎるのはよくありません。歩き過ぎたり激し過ぎる運動を行ったりして血管がつまると、それが動脈硬化に繋がる可能性もあります。
自分の体力と相談したながら、高齢者であれば1日6,000歩、成人であれば8,000以上を目標にウォーキングを行い、余裕のある場合は1万歩を目指すのが良いでしょう。
※1厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」参照
ウォーキングがもたらす健康効果
ウォーキングは、単に体を動かすだけでなく、脳の健康、心身の健康、そして長寿にもつながる可能性のある素晴らしい習慣です。
- 健康増進
歩くことは、心肺機能の向上、血圧の安定、血糖値の改善など、様々な生活習慣病予防に効果が期待できます。 - 肥満予防
歩行は消費カロリーを増やし、肥満予防に繋がります。 - 精神的な健康
歩くことはストレス解消や気分転換にもなり、精神的な健康にも良い影響を与えます。 - 免疫力向上
適度な運動は免疫力を高め、風邪などの感染症予防にも役立ちます。 - 骨の健康
体重がかかることで骨が刺激され、骨密度が向上し、骨粗鬆症予防に繋がります。
内臓脂肪・お腹の浮き輪への効果
日々の飲酒や食事で内臓脂肪が溜まり、お腹周りが気になる方もいるかと思います。そんな内臓脂肪にもウォーキングは効果的です。
- 基礎代謝の向上
ウォーキングは筋肉を使う運動です。基礎代謝を上げ、痩せる効果が期待できます。また基礎代謝が上がると一日の消費カロリーが増え、内臓脂肪を減らすことにもつながります。 - 血行促進
ウォーキングは全身の血行を促進し、内臓への血流も改善します。これにより、内臓脂肪の燃焼を促す効果が期待できます。 - ストレス軽減
ウォーキングはストレス解消にも効果的です。ストレスが軽減されると、過食による脂肪蓄積を防ぐことができます。
ただし、お腹の浮き輪を落とすには、ウォーキングだけでは不十分な場合も。食事制限や他の有酸素運動、筋トレと組み合わせることで、より効果的に体脂肪を減らすことができます。
セロトニンと睡眠の質への効果
たくさんの日光を浴びながらウォーキングをすることによって、セロトニンを分泌を促進し、睡眠の質の向上にも効果があります。
- セロトニンの分泌促進
ウォーキングは、セロトニンと呼ばれる神経伝達物質の分泌を促進します。セロトニンは、心の安定や幸福感をもたらすだけでなく、睡眠の質の向上にも深く関わっています。 - 睡眠の質の向上
セロトニンは、睡眠ホルモンであるメラトニンの生成を促します。そのため、ウォーキングをすることで、夜間の睡眠の質が向上し、やすらかな眠りにつけるようになります。
海馬への影響
- 海馬の活性化
歩くことは脳への血流を促進し、特に海馬と呼ばれる記憶を司る部分の働きを活性化させると考えられています。 - 神経新生促進
海馬では新しい神経細胞が生まれ続けることが知られていますが、歩くことでこの神経新生が促進される可能性があります。 - 認知機能の改善
海馬の活性化は、記憶力や学習能力の向上、認知症予防にも繋がると期待されています。
死亡リスクへの影響
- 心血管疾患リスクの低下
歩くことは心肺機能を向上させ、高血圧や動脈硬化などの心血管疾患のリスクを低下させます。 - 糖尿病リスクの低下
インスリン抵抗性を改善し、血糖値をコントロールする効果が期待できます。 - がんリスクの低下
癌のリスクへの影響
特定のがん種については、十分なエビデンスはまだ揃っていませんが、一部のがん種ではリスク低下の可能性が示唆されています。
- 大腸がん
歩くことは腸の蠕動運動を活発にし、便通を改善することで大腸がんのリスクを低下させる可能性があります。 - 乳がん
一部の研究では、乳がんのリスク低下との関連性が示唆されています。
その他の病気のリスク
1日1万歩を歩くと日光をたくさん浴びることができますので、セロトニンの分泌やビタミンDの生成など様々な効果が期待できます。
- うつ病
歩くことはセロトニンの分泌を促進し、ストレスを軽減する効果があるため、うつ病の予防や改善に役立つ可能性があります。 - 骨粗鬆症
体重がかかることで骨が刺激され、骨密度が向上し、骨粗鬆症予防に繋がります。
健康に効果的なウォーキングのやり方は?
1万歩を歩くのに必要な時間は約1時間40分です。ゆっくり歩いた場合でも2時間近くかかります。消費カロリーは約300キロカロリーなので、かなりの時間と運動量がかかります。一度に1万歩を歩こうとせずに、トータルで1日1万歩を目指すように意識してみましょう。
注意点
- 個人差
個人差があるため、無理のない範囲で継続することが大切です。年齢、体力、生活習慣などによって、適切な歩数は異なります。 - 大切なのは継続性
毎日少しずつでも歩く習慣をつけることが大切です。前日に歩き過ぎて足が痛い・腕が疲れたといった場合は無理をしないようにしましょう。 - 自分に合った目標を設定
無理のない範囲で、目標歩数を設定しましょう。
歩くときのポイント
- 足に合ったシューズを選ぶ
- 歩く前に軽いストレッチをする
- 背筋を伸ばしてしっかり前を向く
- 大股を意識する
- 足首を直角にして、すねの前の筋肉を使う
- かかとから地面に着地する
- 肘を直角にして、腕を前後に大きく振る
1万歩を距離にすると何キロ?
平均的な歩幅を60〜70cmと考えると、1万歩を距離にすると6km~7kmになります。
1万歩を歩くのに必要な時間は?
1,000歩を歩くのに約10分かかります。そのため、1万歩を歩くには100分=1時間40分歩く必要があります。
一万歩の消費カロリーは?
1万歩ウォーキングすると、消費カロリーは約300キロカロリーになります。
走るより歩く?
年齢や運動経験などにもよりますが、ジョギングはウォーキングよりも比較的負荷が高くなります。
- 関節への負担が少ない
ウォーキングは、走るよりも関節への負担が少ない運動です。そのため膝や腰に痛みがある人でも、比較的安全に続けられます。 - 心肺機能の向上
ウォーキングは、心肺機能の向上にも効果があります。ただし、短時間で大きな効果を得たい場合は、走る方が効率的です。 - 自分に合った運動を選ぶ
どちらが良いかは、個人の体力や目標によって異なります。無理なく続けられる方が、健康効果を得るためには重要です。
筋トレとの組み合わせ
ウォーキングは筋トレとも相性が良い運動です。体を引き締めることもできるので、取り入れることをおすすめします。
- 相乗効果
ウォーキングと筋トレを組み合わせることで、より高い効果が期待できます。 - 筋肉量の増加
筋トレは、筋肉量を増やす効果があります。筋肉量が増えると、基礎代謝が上がり、脂肪燃焼効果が高まります。 - 体型の引き締め
ウォーキングで脂肪を燃やし、筋トレで筋肉をつけることで、引き締まった美しいボディラインを作ることができます。
まとめ
ウォーキングは、手軽に始められる運動でありながら、様々な健康効果が期待できます。内臓脂肪の減少、睡眠の質の向上、ストレス軽減など、現代人が抱える様々な悩みの解決に役立つ可能性があります。
「1日1万歩」は絶対ではありませんが、一万歩以上を歩くことは健康維持に効果的です。ただし、無理をし過ぎると長続きしませんし体に悪影響を及ぼす可能性も。体力や年齢を考慮して、高齢者であれば1日6,000歩、成人であれば1日8,000歩を目標にまずははじめてみましょう!
▼関連記事▼
コメント