七十二候(しちじゅうにこう)とは、日本の伝統的な季節の区切り方です。
まだカレンダーのなかった日本で、田植えや収穫の時期を知る目安として使われてきました。
同様に暦を表すものに「二十四節気」があり、これは1年を24つに分けてその季節にふさわしい名前をつけたものです。
七十二候はさらに二十四節気を細分化し、四季(時候)の移り変わりを短い言葉で表現しているのが特徴です。
こちらでは、七十二候についてそれぞれの読み方や意味を一覧でご紹介していきます。
※二十四節気についてはこちらの記事も参照ください。
七十二候(しちじゅうにこう)とは
二十四節気の一節を「初候」「次候」「末候」の3つにわけるので、七十二候は合計72つになります。5日毎に時候を区切り、気候だけではなく鳥や花などの動植物の変化も細やかに表現しているのが特徴です。
たとえば、春の七十二候のである“東風解凍”(はるかぜこおりをとく)は、その言葉だけで、春の訪れを感じさせます。
七十二候一覧|読み方・意味・時期
七十二候の読み方や意味を一覧でご紹介します。
(漢字や読み方によっては暦や文献によって差異があります)
七十二候《 春 》
七十二候の春は、立春から穀雨までの期間に相当します。この期間には、植物の芽吹きや成長、昆虫の活動などが活発になる時期であり、自然界が徐々に生き生きと活気づいていく様子が表現されています。例えば、「桜始開(さくらはじめてひらく)」や玄鳥至(つばめきたる)」などが春の七十二候に含まれます。
二十四節気 | 時候 | 七十二候 | 七十二候の読み方 | 七十二候の意味 | 七十二候の時期 |
立 春 | 初候 | 東風解凍 | はるかぜこおりをとく | 東風が吹いて雪が解けることから、冬の寒さが和らぎ雪解けが進む時期 | 2月4日〜2月8日頃 |
次候 | 黄鴬睍睆 | うぐいすなく | ウグイスが山里で鳴き始める意味 | 2月9日〜2月13日頃 | |
末候 | 魚上氷 | うおこおりをいずる | 凍っていた川や湖の表面が割れ、春の気配を感じた魚が飛び跳ねる頃を意味する | 2月14日〜2月18日頃 | |
雨 水 | 初候 | 土脉潤起 | つちのしょううるおいおこる | 凍っていた土が雨で潤い、植物が芽吹はじめるという意味 | 2月19日〜2月23日頃 |
次候 | 霞始靆 | かすみはじめてたなびく | 雨水や溶けた水に日が指し、水蒸気が霞になってたなびくこと。 | 2月24日〜2月28日頃 | |
末候 | 草木萌動 | そうもくめばえいずる | 草木が芽吹き始める頃時期をさす。 | 3月1日〜3月5日頃 | |
啓 蟄 | 初候 | 蟄虫啓戸 | すごもりのむしとをひらく | 地中で冬ごもりをしていた虫たちが、春の気配を感じて外に出てくること。 | 3月6日〜3月10日頃 |
次候 | 桃始笑 | ももはじめてさく | 桃の花のつぼみが開き始めること。 | 3月11日〜3月15日頃 | |
末候 | 菜虫化蝶 | なむしちょうとなる | 冬を越したサナギが羽化して蝶になるという意味。 | 3月16日〜3月20日頃 | |
春 分 | 初候 | 雀始巣 | すずめはじめてすくう | スズメが巣を作り始める時期。この日を境に日本などの北半球は日が長くなります。 | 3月21日〜3月25日頃 |
次候 | 桜始開 | さくらはじめてひらく | 春の陽気に誘われて桜の花が咲き、ほん角的な春になること。 | 3月26日〜3月30日頃 | |
末候 | 雷乃発声 | かみなりすなわちこえをはっす | 春の訪れと共に、遠くで雷の音がしはじめるという意味。 | 3月31日〜4月4日頃 | |
清 明 | 初候 | 玄鳥至 | つばめきたる | ツバメが南から海を渡ってやってくる季節。 | 4月5日〜4月9日頃 |
次候 | 鴻雁北 | こうがんかえる | 冬を日本で過ごしていた渡鳥の雁(がん)が北国へ去っていく頃。 | 4月10日〜4月14日頃 | |
末候 | 虹始見 | にじはじめてあらわる | 虹がよく見えるようになる時期 | 4月15日〜4月19日頃 | |
穀 雨 | 初候 | 葭始生 | あしはじめてしょうず | 水辺に生息する葭(あし)が芽吹き始める時期。 | 4月20日〜4月24日頃 |
次候 | 霜止出苗 | しもやんでなえいづる | 霜が降りなくなり、稲の苗が生長しはじめるという意味。 | 4月25日〜4月29日頃 | |
末候 | 牡丹華 | ぼたんはなさく | 赤や白の牡丹が花を咲かせる頃。 | 4月30日〜5月4日頃 |
七十二候《 夏 》
七十二候の夏は、立夏から大暑までの期間に相当します。この期間は気温が高くなり、梅雨や夏の暑さが本格化する時期です。自然界では農作物の成長が盛んになり、蝉の鳴き声や蛙の鳴き声が聞こえる季節でもあります。例えば、「麦秋至(むぎとくにいたる)」や「菖蒲華(あやめはなさく)」などが夏の七十二候に含まれます。
二十四節気 | 時候 | 七十二候 | 七十二候の読み方 | 七十二候の意味 | 七十二候の時期 |
立 夏 | 初候 | 蛙始鳴 | かわずはじめてなく | 田んぼなどでカエルが鳴き始める頃。 | 5月5日〜5月9日頃 |
次候 | 蚯蚓出 | みみずいずる | 冬眠していた蚯蚓(ミミズ)が土の中から出てくること。 | 5月10日〜5月14日頃 | |
末候 | 竹笋生 | たけのこしょうず | たけのこが生えてくる時期。 | 5月15日〜5月20日頃 | |
小 満 | 初候 | 蚕起食桑 | かいこおきてくわをはむ | 蚕(かいこ)が桑の葉を盛んに食べて成長する時期をさす。 | 5月21日〜5月25日頃 |
次候 | 紅花栄 | べにばなさかう | 紅花が咲き誇る時期。 | 5月26日〜5月30日頃 | |
末候 | 麦秋至 | むぎのときいたる | 麦などの色々な穀物が実り、たわわに黄金色の穂をつける時期 | 5月31日〜6月5日頃 | |
芒 種 | 初候 | 蟷螂生 | かまきりしょうず | カマキリが卵からかえる時期。 | 6月6日〜6月10日頃 |
次候 | 腐草為螢 | くされたるくさほたるとなる | 腐ったような草の中から、蛍が成虫となって光を放ち飛び交う頃。 | 6月11日〜6月15日頃 | |
末候 | 梅子黄 | うめのみきばむ | 梅の実が熟して色づく頃。 | 6月16日〜6月20日頃 | |
夏 至 | 初候 | 乃東枯 | なつかれくさかるる | 乃東とは、冬至に芽を出し夏至に枯れる「夏枯草 (かこそう)」の古名で、枯れ始める時期のこと。 | 6月21日〜6月26日頃 |
次候 | 菖蒲華 | あやめはなさく | 菖蒲(あやめ)の花が咲き始める頃。 | 6月27日〜7月1日頃 | |
末候 | 半夏生 | はんげしょうず | カラスビシャクが生え始める時期。半夏生までに田植えを終えないと収穫量が半分になると言われており、農家にとって重要な日だった。 | 7月2日〜7月6日頃 | |
小 暑 | 初候 | 温風至 | あつかぜいたる | 熱気を含んだ夏の風が吹きはじめる頃。 | 7月7日〜7月11日頃 |
次候 | 蓮始開 | はすはじめてひらく | 池の水面に蓮(ハス)の花が咲き始める頃という意味。 | 7月12日〜7月16日頃 | |
末候 | 鷹乃学習 | たかすなわちわざをならう | 鷹(タカ)のヒナが飛び方を覚え、巣立ちを迎える頃。 | 7月17日〜7月22日頃 | |
大 暑 | 初候 | 桐始結花 | きりはじめてはなをむすぶ | 桐の花が硬い実を結ぶ頃。 | 7月23日〜7月28日頃 |
次候 | 土潤溽暑 | つちうるおうてむしあつし | 土がじっとりとして蒸し暑くなる時期をさす。 | 7月29日〜8月2日頃 | |
末候 | 大雨時行 | たいうときどきにふる | 夏になり、夕立などの激しい雨が降る時期。 | 8月3日〜8月7日頃 |
七十二候《 秋 》
七十二候の秋は、立秋から霜降までの期間に相当します。この期間は季節が涼しくなり、稲穂が実って秋の収穫が始まる時期です。自然界では木々の葉が色づき始め、秋風が吹く風景が広がります。例えば、「鶺鴒鳴(せきれいなく)」や「菊花開(きくのはなひらく)」などが秋の七十二候に含まれます。
二十四節気 | 時候 | 七十二候 | 七十二候の読み方 | 七十二候の意味 | 七十二候の時期 |
立 秋 | 初候 | 涼風至 | すずかぜいたる | 暦の上で、夏至と秋分の中間。涼しい風が吹き、秋の気配を感じられる時期。 | 8月7日〜8月12日頃 |
次候 | 寒蝉鳴 | ひぐらしなく | 蝉の一種であるヒグラシが鳴き始める頃。 | 8月13日〜8月17日頃 | |
末候 | 蒙霧升降 | ふかききりまとう | 深い霧が立ち込める頃。 | 8月18日〜8月22日頃 | |
処 暑 | 初候 | 綿柎開 | わたのはなしべひらく | 綿の実を包んでいた萼(がく)が開き、中から綿毛が出てくる頃。 | 8月23日〜8月27日頃 |
次候 | 天地始粛 | てんちはじめてさむし | 暑さがようやく収まり、涼しくなりはじめる時期。 | 8月28日〜9月1日頃 | |
末候 | 禾乃登 | こくものすなわちみのる | 田んぼに稲が実り、穂が垂れる頃。 | 9月2日〜9月7日頃 | |
白 露 | 初候 | 草露白 | くさのつゆしろし | 草に降りた露が白く輝いて見える時期。 | 9月8日〜9月12日頃 |
次候 | 鶺鴒鳴 | せきれいなく | 鶺鴒(セキレイ)が鳴き始める頃という意味。 | 9月13日〜9月17日頃 | |
末候 | 玄鳥去 | つばめさる | 春、日本にやってきたツバメが、子育てを終えて南へ帰っていく時期。 | 9月18日〜9月22日頃 | |
秋 分 | 初候 | 雷乃収声 | かみなりすなわちこえをおさむ | 夏に鳴り響いていた雷が鳴らなくなってくる頃。 | 9月23日〜9月27日頃 |
次候 | 蟄虫坏戸 | むしかくれてとをふさぐ | 虫たちが地中にもぐり、冬ごもりを始める頃。 | 9月28日〜10月2日頃 | |
末候 | 水始涸 | みずはじめてかるる | 田んぼの水が減り、稲刈りの時期になったということ。 | 10月3日〜10月7日頃 | |
寒 露 | 初候 | 鴻雁来 | こうがんきたる | 冬を日本で過ごす雁(がん)が北から渡ってくる頃をさす。 | 10月8日〜10月12日頃 |
次候 | 菊花開 | きくのはなひらく | 菊の花が咲き始める時期。 | 10月13日〜10月17日頃 | |
末候 | 蟋蟀在戸 | きりぎりすとにあり | 冷え込みはじめ、螽斯(キリギリス)が暖かさを求めて戸口にとまる頃。 | 10月18日〜10月22日頃 | |
霜 降 | 初候 | 霜始降花 | しもはじめてふる | 霜が降り始める頃。 | 10月23日〜10月27日頃 |
次候 | 霎時施 | こさめときどきふる | 小雨が時々降るようになる頃。 | 10月28日〜11月1日頃 | |
末候 | 楓蔦黄 | もみじつたきばむ | 楓(かえで)や蔦(つる)の葉が色づく頃。 | 11月2日〜11月6日頃 |
七十二候《 冬 》
七十二候の冬は、立冬から大寒までの期間に相当します。この期間は気温が最も低くなり、寒さが厳しくなる時期です。自然界では植物が休眠し、動物たちは冬眠や冬毛に身を包む時期となります。例えば、「閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)」や「水沢腹堅(さわみずこおりつめる)」などが冬の七十二候に含まれます。
二十四節気 | 時候 | 七十二候 | 七十二候の読み方 | 七十二候の意味 | 七十二候の時期 |
立 冬 | 初候 | 山茶始開 | つばきはじめてひらく | 山茶花(サザンカ)の花が咲き始める頃。 | 11月7日〜11日頃 |
次候 | 地始凍 | ちはじめてこおる | 寒さが増して、大地が凍り始める頃をさす。 | 11月12日〜11月16日頃 | |
末候 | 金盞香 | きんせんかさく | 金盞香は水仙の花のこと。水仙が咲き始める頃をさす。 | 11月17日〜11月21日頃 | |
小 雪 | 初候 | 虹蔵不見 | にじかくれてみえず | 冬の到来で日差しが弱まり、あまり虹を見かけなくなる頃。 | 11月22日〜11月26日頃 |
次候 | 朔風払葉 | きたかぜこのはをはらう | 北風が吹き始め、木の葉を落とす頃。 | 11月27日〜12月1日頃 | |
末候 | 橘始黄 | たちばなはじめてきばむ | 橘(たちばな)の実が黄色く色づき始める時期。 | 12月2日〜12月6日頃 | |
大 雪 | 初候 | 閉塞成冬 | そらさむくふゆとなる | 空が厚く灰色の雲に覆われ、本格的な冬がやってくる頃。 | 12月7日〜12月11日頃 |
次候 | 熊蟄穴 | くまあなにこもる | クマが冬眠のために冬穴にこもる頃。 | 12月12日〜12月16日頃 | |
末候 | 鱖魚群 | さけのうおむらがる | 鱖魚(けつぎょ)は中国の高級魚。日本では鮭をあて、鮭が群がり川を上っていく時期を意味する。 | 12月17日〜12月21日頃 | |
冬 至 | 初候 | 乃東生 | なつかれくさしょうず | 乃東(なつかれくさ)は、冬に芽を出す夏枯草(かごそう)のこと。夏枯草が芽を出す時期を意味する。 | 12月22日〜12月26日頃 |
次候 | 麋角解 | さわしかのつのおつる | 雄のシカの角が生え変わるために落ちる時期のこと。 | 12月27日〜12月31日頃 | |
末候 | 雪下出麦 | ゆきくだりてむぎのびる | 降り積もった雪の下で、麦が芽を出しはじめる頃。 | 1月1日〜1月4日頃 | |
小 寒 | 初候 | 芹乃栄 | せりすなわちさかう | 春の七草のである芹(せり)が良く育つ頃。 | 1月5日〜1月9日頃 |
次候 | 水泉動 | しみずあたたかをふくむ | 地中で凍っていた泉水が溶け始め、動き出す頃という意味。 | 1月10日〜1月14日頃 | |
末候 | 雉始雊 | きじはじめてなく | 雉(キジ)のオスがメスに求愛するために鳴き始める頃。 | 1月15日〜1月19日頃 | |
大 寒 | 初候 | 款冬華 | ふきのはなさく | 凍てつく寒さの中、ふきのとうが顔を出し始める頃。 | 1月20日〜1月24日頃 |
次候 | 水沢腹堅 | さわみずこおりつめる | 沢の水が氷って厚く張りつめるほど寒い時期という意味。 | 1月25日〜1月29日頃 | |
末候 | 鶏始乳 | にわとりはじめてとやにつく | 春の気配を鶏が感じ、卵を産み始める頃。 | 1月30日〜2月3日頃 |
まとめ
「七十二候」は、「二十四節気」をさらに「初候」「次候」「末候」に3等分した、日本の伝統的な暦です。
鳥や花、気象などに関する事柄が短い言葉で表現されており、農業や漁業、日々の生活において、季節の移り変わりを知る「目安」になってきました。
現代ではあまり使われなくなりましたが、時候の言葉を聞くと日本の移りゆく季節や自然を感じることができます。
七十二候を知って、日本の移りゆく季節を楽しんではいかがでしょうか。
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