保険料に追加される「子ども・子育て支援金」負担額・恩恵は?

「子供・子育て支援金」は、少子化対策の一環として公的医療保険に上乗せして徴収される新たな制度です。

誰の負担額がどのくらい増えて、どのような恩恵が得られるのでしょうかーーこちらの記事では、「こども・子育て支援金」の変更点や、保険料に上乗せされる背景などについて詳しく解説していきます。

目次

子供・子育て支援金とは

「子供・子育て支援金」とは、子育て世帯への経済的な支援(児童手当の拡充をはじめとする様々な支援)を行うための制度です。子育て世帯の経済的な負担を軽減し、安心して子どもを育てられる社会の実現を目指し、2024年6月に「改正子ども・子育て支援法」が成立しました。

2026年度からは、児童手当の所得制限の撤廃や、高校生までの支給対象拡大などが行われます。

この制度の財源は、少子化対策に必要な財源を確保するため、全世代で負担を分担する仕組みとして、公的医療保険料に上乗せして徴収されます。

いつから・誰がどのくらい負担するの?

子供・子育て支援金は2026年度からスタートし、2028年度まで段階的に保険料の金額が引き上げられます。一人あたり負担する金額は全制度平均で月額250~450円となっており、年間3,000~5,400円の負担増になると見込まれています。

また「子ども・子育て支援金」は、保険料から徴収されるため、扶養されている加入者(子どもなど)は保険料を支払う義務はありません。

子ども・子育て支援金の月額負担額

 2026年(令和8年)度2027年(令和9年)度2028年(令和10年)度
加入者
一人あたりの負担額※
被保険者
一人あたりの負担額※
加入者
一人あたりの負担額
被保険者
一人あたりの負担額
加入者
一人あたりの負担額
被保険者
一人あたりの負担額
全制度の平均250円350円450円
被用者保険(会社員・公務員)300円450円400円600円500円800円
国民健康保険(自営業者)250円350円※300円450円※400円600円※
後期高齢者医療制度(75歳以上の高齢者)200円250円350円

※国民健康保険における「加入者」と「被保険者」
加入者: 世帯の代表者で、保険料を支払い、手続きを行う人。
被保険者: 世帯に属するすべての人で、保険の対象となる人。

※国民健康保険は1世帯あたりの金額
国民健康保険の負担額が世帯単位であることを示していますが、世帯人数によって負担額が大きく変わる可能性があります。

具体的に何が変わるの?

子供・子育て支援金では、被保険者が加入する医療保険(健康保険、国民健康保険など)の保険料に上乗せするかたちで負担するため、保険料が増加します。その代わり、児童手当が拡充されるほか、産後休業や育児休業給付などの新制度が創設される可能性があります。

児童手当の拡充

2024年10月から始まる子ども・子育て支援金は、医療保険料に上乗せする形で財源を確保し、児童手当の増額などに充てられます。

2024年9月まで(変更前)
2024年10月~(変更後)
所得制限所得制限あり所得制限なし
1.5万円1.5万円
(第3子以降は3万円)
1万円
(第3子以降は1万5,000円)
1万円
(第3子以降は3万円)
1万円
なし

多子世帯の授業料無償化

2025年度から、多子世帯(子供が3人以上)の学生を対象に、大学等の授業料や入学金の無償化が実施されます。この制度では所得制限はなく、2024年度以前から在学している学生も対象となります。

授業料等支援の上限額

国立大学私立大学
授業料約54万円70万円
入学金約28万円26万円

出産や育児に関わる新たな支援制度の創設

出産後の育児休業給付や育児時短就業給付制度など、新たな支援制度が創設される可能性があります。また、2026年度をめどに、正常分娩による出産費用の保険適用の導入も検討されています。

なぜ保険料に上乗せされるの?

2024年10月から開始予定の「子ども・子育て支援金」制度は、医療保険の保険料に上乗せして徴収される仕組みが導入されました。医療保険は国民皆保険制度であり、国民全員が加入していることから、安定的な財源を確保できるという点で選ばれました。

医療と子育てはどちらも国民の健康に関わる重要な課題であり、両者を連携させることで、より効果的な支援体制を構築できると考えられています。

この制度が導入された背景には、以下の理由が考えられます。

  • 財源の確保
    少子化対策には多額の費用がかかるため、安定的な財源を確保する必要がありました。
  • 全世代での負担
    少子化は将来の社会保障制度にも影響を与えるため、子どもを産み育てている世代だけでなく、将来子どもを産む可能性のある世代も含め、全世代で子育てを支えるという考えに基づいています。

保険料の負担は増えるのに、なぜ支援金が必要なの?

少子化対策は、国全体で取り組むべき課題であり、国民全員がその責任を共有するという考え方です。

また、支援金制度の導入によって、出生率の向上や経済活性化につながり、長期的に見ると国民全体の負担軽減につながる可能性もあります。

子ども・子育て支援制度の変化について

近年、子ども・子育て支援制度は大きく変化しています。これらの制度は、少子化対策の一環として、出産・育児期の経済的な負担を軽減し、子育てしやすい環境づくりを目指しています。以下では子供・子育て支援制度の変化について、詳しく解説していきます。

具体的な制度と変更点

1. 妊婦支援給付金

  • 変更点: 妊娠期からの経済的な支援が強化されています。妊婦支援給付金は、妊娠中の方を対象とした経済的な支援制度で、多くの自治体で実施されています。妊娠届の提出をきっかけに、5万円分の支援金が支給されるケースが多いようです。
  • 妊婦支援給付金の概要
    • 目的: 妊娠中の経済的な負担を軽減し、安心して出産を迎えることができるよう支援すること。
    • 支給額: 一般的に5万円が支給されますが、自治体によって金額や支給方法が異なる場合があります。
    • 支給対象: 妊娠届を提出した妊婦が対象となります。
    • 支給方法: 現金で支給される場合や、商品券やクーポンなどで支給される場合があります。
    • 利用方法: 支給されたお金は、マタニティ用品の購入、妊婦健診費用、出産準備など、自由に使うことができます。

2. 出産一時金

  • 変化点: 2023年4月1日から、出産一時金が42万円から50万円に引き上げられました。

3. 出産費用の保険適用

  • 変更点: 健康保険の一部が出産費用に適用されます。ただし、自己負担額は一定程度発生します。2026 年度を目途に、出産費用(正常分娩)*険適用の導入を含め、出産に関する支援等の更なる強化について検討を進める。となっています。

    *2022年度の全国の正常分娩費用は平均48.2万円
    厚生労働省「出産費用の見える化」参照

4. 出産後休業給付金

  • 変更点: 出産後に一定期間休業した場合に、雇用保険から給付金が支給される制度です。
    • 取得期間や支給額については、雇用保険の規定に基づきます。
    • 男性育休の取得促進
      給付面の対応として、いわゆる「産後パパ育休」(最大 28 日間)を念頭に、出生後一定期間内に両親ともに育児休業を取得することを促進するため、給付率を現行の 67%(手取りで8割相当)から、80%(手取りで 10 割相当)へと引き上げる。

5. 育児時短就業給付金

  • 変更点: 育児のために労働時間を短縮した場合に、雇用保険から給付金が支給される制度です。
    • 取得期間や支給額については、雇用保険の規定に基づきます。
      、「育児時短就業給付(仮称)」を創設
      こどもが2歳未満の期間に、時短勤務を選択した場合に、時短勤務時の賃金の 10%を支給することとし、2025 年度から実施する予定。

6. 国民健康保険料の免除

  • 変更点: 生まれてくる子どもの数や世帯の収入に応じて、国民健康保険料が免除される場合があります。
    • 免除の基準は、自治体によって異なります。
    • 自営業・フリーランス等の育児期間中の経済的な給付
      現行の産前・産後期間の保険料免除制度や被用者保険の育児休業期間の保険料免除措置を参考としつつ、2026 年度に施行する予定。

7. 雇用保険の週10時間以上勤務も加入

  • 変更点: 雇用保険に加入できる基準が緩和され、週10時間以上勤務する人も加入できるようになりました。
    • これにより、出産や育児による離職・再就職を繰り返す人への支援が強化されています。

8. 子ども誰でも通園制度

  • 変更点: 認可保育所や認定こども園など、保育の質が確保された施設への入園をより多くの子どもに提供する制度です。
    • 待機児童の解消を目指し、保育施設の整備が進められています。
    • 「こども誰でも通園制度(仮称)」の創設
      現行の幼児教育・保育給付に加え、月一定時間までの利用可能枠の中で、就労要件を問わず時間単位等で柔軟に利用できる新たな通園給付。

9. 子の看護休暇

  • 変更点: 子どもが病気やケガをした場合、一定期間仕事を休むことができる制度です。
    • 利用期間や対象となる子どもは、企業の就業規則によって異なります。
    • 対象となるこどもの年齢
      小学校3年生修了時まで引き上げるほか、こどもの行事(入園式等)参加や、感染症に伴う学級閉鎖等にも活用できるように休暇取得事由の範囲を見直す

10. 児童手当

  • 変更点: 児童手当の支給額や対象年齢が変更される場合があります。
    • 最近では、所得制限の撤廃や支給額の増額などが検討されています。
    • 児童手当については、次代を担う全てのこどもの育ちを支える基礎的な経済支援としての位置付けを明確化する。このため、所得制限を撤廃し、全員を給付とするとともに、支給期間について高校生年代まで延長。
    • 児童手当の多子加算については、第3子以降3万円とする。

まとめ

子ども・子育て支援制度は、日々変化しています。また、制度の内容は自治体や企業によってそれぞれ異なる場合があります。詳細については、お住まいの市区町村の窓口や、関係機関にご確認ください。

制度を利用する際の注意点

  • 制度内容は、各自治体や企業によって異なる場合があります。
  • 必要な書類や手続きが複雑な場合もありますので、事前に確認しておきましょう。
  • 制度は定期的に見直されるため、最新の情報を確認することが大切です。

参考文献:
こども家庭庁・子ども未来戦略
「こども未来戦略」 ~ 次元の異なる少子化対策の実現に向けて ~

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