「子どもが何度言っても片付けない」「注意するとかんしゃくを起こす」「つい感情的に叱ってしまう……」そんな子育ての悩みを抱えていませんか?
毎日忙しいなかで、子どもへの接し方に悩むことは珍しくありません。
そんなママ・パパに知ってほしいのが「ペアレント・トレーニング」です。ペアレント・トレーニングは、子どもの行動を理解し、ほめ方や指示の出し方を工夫することで親子の関わり方を見直していく方法です。この考え方や技法を使うと、子どもに対してイライラしたり叱ったりする回数が減り、子どもに穏やかに関わることができるようになります。
この記事では、実際にペアレント・トレーニングを受講した筆者がその目的や基本的な考え方、自宅で簡単にできる実践方法を紹介します。
受けたいと思ったときにどこで学べるのか、資格は必要なのかといった疑問にもお答えします。
ペアレント・トレーニングとは
ペアレント・トレーニングとは、保護者が子どもの行動を理解し、ほめ方や指示の出し方など、日常生活で役立つ関わり方を学ぶ方法です。
ポイントは、子どもの困った行動に注目して叱るのではなく、小さくてもできた好ましい行動を注目して褒めることです。
ペアレント・トレーニングの目的
ペアレント・トレーニングの主な目的は、子どもの行動を理解し、親子がよりよい関係を築けるようにすることです。
具体的には、次のようなことを目指します。
- 子どもの好ましい行動を増やす
- ほめ方や指示の出し方を身につける
- 困った行動が起こるきっかけを理解する
- 子どもが行動しやすい環境を整える
- 親が落ち着いて子どもに関われるようにする
大切なのは、子どもを思いどおりに動かすことではありません。
ペアレント・トレーニングの基本的な考え方
ペアレント・トレーニングでは、子どもの行動を具体的に捉え、望ましい行動に注目することを大切にします。
例えば、「うちの子はわがまま」と性格で判断するのではなく、「片付けをお願いしても、遊びを続けている」と実際の行動に注目します。
行動を具体的に捉えることで、どのような場面で困りやすいのか、どのような対応が役立つのかを考えやすくなります。また子どもができていないことだけでなく、できていることにも目を向けましょう。
自分からあいさつをした、声をかけたら返事をした、途中まで片付けられたなど、小さな変化も大切な成長の一歩です。
幼児には短く具体的な言葉で伝え、小学校低学年の子どもには、やることを順番に示したり、できたことを認めたりするとよいでしょう。
「できていないことを注意する」だけでなく、「できていることに気づいて伝える」。 これが、家庭で始められる大切な工夫のひとつです。
ペアレント・トレーニングのやり方
ここからは、家庭で実践しやすい方法を4つの段階に分けて紹介します。専門プログラムの内容や順番は実施機関によって異なるため、家庭で取り組みやすい実践例として参考にしてください。
セッション1:子どもの行動を3種類に分ける
まずは、子どもの行動を次の3種類に分けて考えてみましょう。
1. 好ましい行動(できるだけ増やしていきたい行動)
例:何かをもらったときに「ありがとう」と言う、自分からあいさつをする、使ったおもちゃを片付ける。
2. 好ましくない行動(困ることはあるものの、危険性がなく、適切な対応によって改善を目指せる行動)
例:声をかけてもすぐに片付けない、遊びをなかなか終えられない、支度に時間がかかる。
こうした行動には、片付け方がわからない、次の行動に切り替えるのが難しいなど、さまざまな理由が考えられます。行動だけを見て叱るのではなく、どのような状況で起きているのかを観察しましょう。
3. 危険な行動・許しがたい行動(本人や周囲の人の安全を脅かす行動など)
例:怒ると爪を立てて人を傷つける、人をたたく、物を投げる、道路へ飛び出す。
このような行動が見られたら、安全の確保を優先します。危険な行動を単に無視することは避け、必要に応じて専門家に相談しましょう。
セッション2:肯定的な注目を与える
「肯定的な注目」とは、子どものよい行動や努力に気づき、言葉や態度で伝えることです。
例えば、次のような方法があります。
- ほめる:「自分で片付けられたね!」
- 励ます:「あと少しだね。頑張っているね」
- 気づきを伝える:「自分から靴をそろえたんだね」
- ほほえむ: 温かい表情を向ける
- 感謝する:「お皿を運んでくれてありがとう」
好ましい行動を見つけたら、できるだけその場で伝えてみましょう。
ほめ方のコツ
ほめるときは、次の5つを意識すると実践しやすくなります。
1. タイミング: よい行動をしたら、できるだけすぐに伝えましょう。
2. 視線・からだ: 子どもの様子に注意を向け、自然に顔を向けたり、近くで話しかけたりします。目を合わせるのが苦手な子には無理をさせないようにしましょう。
3. 声の調子: 温かく穏やかな声で伝えます。大げさにほめられるのが苦手な子には、落ち着いた声で十分です。
4. ことば:「すごいね」だけでなく、「自分から靴をそろえられたね」など、何がよかったのかを具体的に伝えます。
5. 行動をほめる: 結果だけでなく、努力や工夫にも目を向けましょう。うまくできなくても、最後まで取り組んだことを認めるのも大切です。
幼児には短い言葉で、小学校低学年の子どもには具体的な行動を伝えるとよいでしょう。ほめられることを恥ずかしく感じる子もいるため、その子に合った伝え方を探してみてください。
ほめることが苦手なママ・パパは、まず1日1回、子どものよい行動を見つけるところから始めてみましょう。
スペシャルタイムをつくる
スペシャルタイムとは、親子で一緒に遊んだり話したりする時間をつくり、子どもにしっかりと関心を向ける取り組みです。
- 一緒に絵本を読む
- 子どもの好きな遊びに付き合う
- お絵描きや折り紙を楽しむ
- 子どもの話をゆっくり聞く
親が遊び方を細かく指示したり、間違いを注意したりするのではなく、子どもの興味に寄り添うことがポイントです。
忙しい場合は、短い時間からでも構いません。スマートフォンを置き、親子で向き合う時間を意識してみましょう。
セッション3:好ましくない行動を減らすには?
子どもの困った行動には、必要以上に注目せず、好ましい行動をしたときにしっかり関わる方法があります。
ただし、すべての行動を無視すればよいわけではありません。行動の種類や理由を考えながら、対応を選びましょう。
「見ないフリ」をする
状況によっては、好ましくない行動への注目を一時的に控える方法が用いられます。「計画的な無視」と呼ばれることもあります。
例えば、子どもが親の気を引こうとして大きな声を出している場合などです。安全に問題がなく、注目を得ることが行動のきっかけになっていると考えられるときは、反応を控えることで、その行動が続きにくくなる場合があります。
「見ないフリ」のコツ
- タイミング: 安全が確保され、注目を控えても問題がない行動か確認する。
- 視線・からだ: 大きな反応をせず、落ち着いて対応する。
- メッセージ: 必要なことは短く伝え、言い争いを続けない。
- ほめる準備: 子どもが落ち着いたり、適切な方法で気持ちを伝えたりしたら、その行動を認める。
大声で要求している子どもが「手伝って」と言えたら、「手伝ってって言えたね」と伝えましょう。
見ないフリをするときの注意点
たたく、爪を立てる、物を投げるなどの危険な行動や、子どもが強い不安や苦痛を感じているときは、無視せず必要な対応を優先してください。
助けを求めている可能性がある場合も同様です。特に危険な行動が繰り返される場合は、安全を確保したうえで、専門家に相談しましょう。
好ましくない行動を減らすための伝え方
子どもが指示を聞いてくれないときは、何度も叱るよりも、伝え方を工夫してみましょう。
1. 指示を繰り返す
何度も大声で繰り返すのではなく、短く具体的に伝えます。
例:「早く片付けて!」ではなく、「ブロックを箱に入れよう」。
2. ブロークンレコード・テクニック
感情的にならず、必要なメッセージを繰り返し伝える方法です。
例:「もっと遊びたいんだね。でも、今日はここまでだよ」。
子どもの気持ちは受け止めながら、必要なルールは一貫して伝えましょう。
3. 予告する
急な切り替えが苦手な子には、事前に予定を知らせます。
例:「あと5分でお片付けだよ」「この絵本を読み終わったらお風呂に入ろう」。
タイマーや時計、絵カードを使う方法もあります。
4. 選択させる
子どもが自分で選べる場面では、選択肢を用意します。
例:「先に歯を磨く? それともパジャマに着替える?」
自分で選ぶ機会をつくることで、行動に取り組みやすくなる場合があります。
5.「〜したら、…できる」と伝える
やるべきことと、その後にできることをつなげて伝えます。
例:「おもちゃを片付けたら、一緒に絵本を読もうね」。
実行できる約束にし、一貫して対応しましょう。
6. 兄弟姉妹との協力を促す
兄弟姉妹がいる家庭では、それぞれが取り組みやすい役割をお願いする方法もあります。
例:「お兄ちゃんは本を棚に戻してね。妹はクレヨンを箱に入れてくれる?」
兄弟姉妹を比較したり、責めたりせず、協力できたことを一緒に喜びましょう。
セッション4:制限を設ける――ペナルティの与え方
子どもがルールを守れないときは、家庭で守るべきルールを具体的に示し、守れなかった場合の対応をあらかじめ考えておきましょう。
1. ルールを事前に伝える
例:「人をたたかない」「ゲームは決めた時間まで」。
幼児には短い言葉やイラストで、小学校低学年の子どもにはルールを守る理由も伝えます。
2. 対応は具体的かつ一貫性のあるものにする
ゲームの終了時間を守れなかった場合は、次に遊ぶ時間や使い方を確認するなど、ルールに関連した対応を考えましょう。
怒りに任せて、過度な制限を突然決めることは避けてください。
3. 子どもを傷つける罰は与えない
たたく、脅す、人格を否定する、食事や睡眠などの基本的な生活を制限するといった対応は避けましょう。
ペナルティを与えること自体が目的ではありません。子どもがルールを理解し、適切な行動を身につけられるようにすることが大切です。
4. できたときは認める
ルールを守れたときや、気持ちを落ち着けて行動できたときは、「時間になったらゲームを終えられたね」と具体的に伝えましょう。
ペナルティの方法は、子どもの年齢や発達段階、行動の背景などを踏まえて慎重に考える必要があります。危険な行動や激しいかんしゃくが続く場合は、安全を確保し、専門家に相談しましょう。
ペアレント・トレーニングを簡単に始める3つのコツ
すべての方法を一度に試す必要はありません。まずは、できることをひとつ選んでみましょう。
1. 1日1回、子どもをほめる
自分からあいさつをした、食器を運んだなど、小さな行動を見つけて子どもの目を見ながら言葉にします。
2. 指示は短く具体的にする
「ちゃんとして」ではなく、「ランドセルを棚に置こう」と伝えます。
3. 親子で向き合う時間をつくる
一緒に絵を描いたり、子どもの話を聞いたりする時間を意識しましょう。長時間でなくても、親子で楽しく過ごせる機会を大切にします。
うまくいかない日があっても、自分を責める必要はありません。子どもにも親にも、それぞれのペースがあります。無理なく続けられる方法を探していきましょう。
ペアレント・トレーニングを受けてみてどうだった?
筆者がペアレント・トレーニングを受けようと思ったのは、我が子の習い事が始まったことがきっかけです。
新しく学習教室に通うようになると、教室の宿題だけでなく、小学校の宿題も嫌がるようになりました。毎日叱るようになり、きつく注意して子どもに宿題をやらせることに嫌気がさして、受講を決めました。
初日は、学んだ声かけを試すと子どもの態度が軟化。「これは手応えがある!」と思ったのも束の間、すぐにまた宿題を嫌がるようになりました。
それでも諦めずに実践を続けると、一進一退ではありましたが、少しずつ変化が現れました。
さらに、宿題へのモチベーションを上げるために、次のような工夫も取り入れました。
- 宿題が終わったらおやつを食べる
- 問題を間違えても叱らない
- 時間がかかっても見守る
その結果、今では小学校の宿題はもちろん、学習教室の宿題も、たまには嫌がるものの、前向きに取り組むようになりました。
実際に受講して感じたのは、声かけを工夫するだけでなく、親自身が感情的にならずに子どもと接することも大切だということです。
もちろん、すぐにうまくいくとは限りません。わが家でも、よい変化が見られたと思ったら、また元に戻ることがありました。それでも、子どもの行動だけを変えようとするのではなく、自分の接し方を見直し、環境を工夫することで、少しずつ親子の関わり方が変わっていきました。
子育てに悩んでいるママ・パパも、最初から完璧を目指す必要はありません。できることから試してみてはいかがでしょうか。
ペアレント・トレーニングを受けたい! どこで学べる?
専門家からペアレント・トレーニングを学びたい場合は、次のような窓口に問い合わせてみましょう。
- 市区町村の子育て相談・発達相談窓口: 地域の保護者向け講座や支援プログラムについて相談できます。
- 発達障害者支援センター: 発達に関する相談や、地域で利用できる支援について情報を得られる場合があります。
- 児童発達支援センターなどの支援機関: 保護者向けのプログラムを実施しているか確認してみましょう。
- 医療機関や専門の相談機関: 子どもの発達や行動について相談し、必要な支援につなげてもらう方法もあります。
こども家庭庁の「親子関係形成支援事業」でも、保護者が子どもとの関わり方を学ぶ機会が設けられる場合があります。
また、国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターでは、ペアレント・トレーニングに関する学習コンテンツや関連資料を確認できます。
実施の有無、対象年齢、募集時期、費用などは地域や機関によって異なります。お住まいの自治体の公式サイトを確認し、窓口に問い合わせてみましょう。
ペアレント・トレーニングに資格は必要?
保護者としてペアレント・トレーニングを受けたり、家庭で学んだ方法を実践したりするために、特別な資格を取得する必要はありません。
一方、支援者としてプログラムを実施したい場合は、実施する方式によって必要な知識や研修、実施者の要件などが異なります。
支援者向けの養成研修を受講する場合は、主催機関の公式情報で対象者や修了条件を確認しましょう。特定の資格が全国共通で必要だと判断せず、受講先や実施機関に問い合わせることが大切です。
まとめ|できることからペアレント・トレーニングを始めよう
ペアレント・トレーニングとは、子どもの行動を理解し、ほめ方や指示の出し方、環境の整え方などを工夫することで、親子のよりよい関わり方を目指す方法です。
大切なポイントを振り返ってみましょう。
- 子どもの行動を具体的に観察する
- 好ましい行動を見つけてほめる
- 子どもが行動しやすい環境を整える
- 状況に応じて、困った行動への対応を工夫する
- わかりやすい指示や事前の予告を取り入れる
- 必要なルールを落ち着いて伝える
- 困りごとが続くときは、専門家に相談する
子育てでは、思うようにいかないこともあります。毎日すべての方法を実践する必要はありません。
まずは今日、子どもの小さなよい行動をひとつ見つけて、言葉にしてみてはいかがでしょうか。
親も子どもも、少しずつ変わっていけば大丈夫。親子に合った関わり方を見つけることが、日々の子育てを見直すきっかけになってくれれば幸いです。
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参考資料・公式情報
※ペアレント・トレーニングの対象年齢や実施内容は、プログラムによって異なります。この記事は幼児から小学3年生までの保護者を主な対象とした家庭向けの解説です。子どもの安全や発達に関する心配がある場合は、専門家に相談してください。

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